放牧酪農の中洞正さん

buonpaese2007-05-02

 今日カイシャに行ったら、酪農家の中洞正さんから本が届いていた。
 ちょうど先週新宿で会ったばかりで、そのとき中洞さんに「本出したのかぜのウワサに聞いていたのにぜんぜん連絡こないんだもんナァ…」と愚痴ったら「いやぁごめん早速送るから」と。

 中洞さんとの出会いはもう15年にもなるだろうか。僕が有機農産物流通のカイシャに入社した1991年9月1日、群馬で催された放牧養豚場の開所式が新聞で報道され、その頃はまだ駆け出し(とは失礼)だった中洞さんから電話をもらったのだった。「僕の酪農と考え方が同じ。ぜひ一度こちらに身に来てください」この会話からお付き合いが始まった。









 中洞さんの牛は草だけで育つ。その草は太陽光と水、自然の養分だけで育つ。中洞さんの牛は山で子を産み母乳だけで育つ。寿命を全うするまで生きる。中洞さんの牛は空の下で眠る。春夏秋冬、星の空、雪の空、嵐の空を見て暮らす……
 
 中洞牧場()で暮らしている牛を嘘偽りなく描写するとこうなる。当たり前のようだが日本の業界のヒトに言わせればウソでしょ?となるはずだ。この文章の反対のことを書けば、それを日本の酪農の平均的な姿と捉えてほぼ間違いがない。

     無理 無駄なく 限りなく 自然のままに

 そんな正反対のことを15年、いや牧場に入植して20年続けるとどうなるか?生産量が極めて少ない、販路がない、地元と折り合いがつかない、国の制度にはまらない。当たり前のことを続けるだけで、長い間言い知れない苦労をし、心の淵が震えるような夜を過ごしたことと思う。そのせいか顔のシワは深く、眼は強い意思を表して鋭い。

 新宿ではおおらかにおいしい酒を飲ませてもらった。中洞さんの半生を語る2冊の本。心して読ましてもらおう。

幸せな牛からおいしい牛乳モー革命―山地酪農で「無農薬牛乳」をつくる