岩崎政利さん

buonpaese2007-11-06

 この人抜きに有機農業は語れないだろう。長崎は雲仙市吾妻町の岩崎政利さんだ。
 先月末、同僚のNちゃんと久しぶりに岩崎さんの畑におじゃました。いつもと同じ畑を見て歩き、少しずつ整備が進んでいる研修小屋で話をし、畑の丘から眼下の諫早湾に降りていき、国見の運動場の宿舎に3人で泊まる。風呂に入り、とても質素な食事をして、部屋で飲む、話す。この日のお題は「スローフード、どんですかぁ」。その他もろもろ、いろいろを話し……
 この頃歴史という言葉が気になっている。今自分が話している人は歴史に何かを刻んでる人なのではないか、今ある景色は、いつかなくなってしまうんじゃないか。この人はやっていることは、どんなふうにして引き継がれていくんだろうか……

 5年も前、岩崎さんが東京に出てこられ野菜の自家採種の話をした。そのとき、メガネの奥のちっちゃな目を輝かせて、農法の話をしてたことを覚えている。有機農業は一般に栽培方法とりわけ畑の土作りが中心に語られがちで、その農法も土周辺、作物の生育周辺、肥培管理にまつわるものが多いが、岩崎さんの考え夢見る農法は、種子の生命力を生かして生み出そうとするもので、出来るだけ肥料を使わない考え方だ。その頃自然農法の種苗生産の研究所に行ったりしていて、種苗生産の肥培管理と、食用野菜の肥培管理がぜんぜん違うことは知っていたが、この日も変わらず、その農法の“続き”を話してくださった。
 完全なる無肥料は、野菜という形あるものが畑から外に持ち出される分、どうしてもムリと前提した上で、岩崎さんは土に空気中の窒素を固定するマメ科の品種との混植によって、忌避効果も期待する栽培デザインを構想していた。様々なマメ科作物を植えては様子を見、植えては失敗もし、今はとある珍しい品種に期待をかけているという。研修小屋脇の畑のはじっこに植わっていたその作物は「!!!!!!!」
 ……さて、これも昔話吾妻町の役場で立ち話。暑い日だったから植え込みの木陰、地べたにアグラで話し込んでいたときだった。岩崎さん、話しながらなにやら地面をいじっている。なにしてるんですかと聞くと「え?」と無意識に地面をいじる自分の手に気づき、ただでさえくしゃくしゃの顔を、これ以上ないくらいひしゃげさせ「やあいつのまにか草取りしてしまってたですねェ〜いや〜いや〜勝手に手が動きよるねぇ〜」。土と共に生きているかのような岩崎さんの忘れられないエピソード。
 あいかわらずちっちゃな目を輝かせて話す岩崎さんの、この日はその“手”の歴史を、カメラに納めた。