山脇義秋さん、紀子さん

buonpaese2007-10-03

 川辺から枕崎を通って、あの日9月8日は、やっと目的地の鹿児島県頴娃町の山脇紀子さんのお宅にたどり着いた。紀子さんとは九州の生産者の会議で何度かお会いしていたが、会いに行こう!と思い立ったのは、紀子さんの明るさ。そして紀子さんが、農家としての日々の暮らしをホームページ()を通して美しい写真で発信していることを知ったとき。何度か足を運んできた鹿児島も、入り口までしか知らないような気がしていて、普段から自分たちの暮らしを伝え続けている方の視点をたよりに、もう半歩でも感じることが出来たら、と考えたからだった。
 南海を臨みその円錐を天高くつきあげる開聞岳。その麓は火山活動の残滓かぽっかりあいた湖、ぽこぽこ不連続に顔を見せる山、その隙間に、なだらかだが起伏が多いために細かな段々の畑が広がる。米はあなり作られず、専らサツマイモ。有名な薩摩白波の工場は、開聞岳を借景に、ぴったりとイモ畑が夕日の水平線に貼りついて、絵に描いた様な場所にあった。そんな景色は、あくまでも南の熱い日差しもやわらいだ夕方、紀子さんご夫妻にお会いし、景色でも見るかと登った大野岳からの眺めだった。
 紀子さん、しっかりニコンをぶらさげている。聞くと先生に習っているという。プロのカメラマン先生で、定期的に鹿児島にも来るし、来ないときもメールのやりとりで、それは厳しい指摘をくださるものだから、必死でがんばっているという。その紀子さんの作品はぜひHP()でみてもらいたいが、すごくいい写真だ。
 自然。さりげなし。
 今回の訪問で紀子さんと話してみてその自然さがよくわかった。誰に対しても優しいのだ。気負いも見せず、こつこつたんたんと何かにいそしむ感じ。写真は被写体とのコミュニケーションだから、その気負いのなさが相手の構えさせないのだと思うし、撮る対象も、タイミングもさりげなし。紀子さん自身もカメラに構えていないような、だからカメラも構えないのか、剣術の達人には理を極めるタイプと天然自然天才タイプがいるというが……。

 義秋さんは畑で開口一番「最近の流通は生産者をバカにしちょる」と。どうなることかと思ったが、それは気さくでいい方であった。ガンコな面持ち。昔一度だけお会いして一気に意気投合した種子島の浦辺誠さんをよくご存知で、有機農業一徹の人であるように思った。夕食をご自宅でいただく。畑の野菜をおかずに。これがまた素朴でうまかった。そのあとはおなじみ焼酎で……。どんな話をしただろう。カメラの先生の話、ムラのお付き合いの話、有機農業の話……。翌日あいさつに畑に戻ったとき、お二人は出初めのサツマイモの出荷選別作業。イモのヒゲ根を切る姿が哲学者のような義秋さん。ヒゲ根ば切る手間んごつどうしてせんばいかんかようく考えて、とヒゲ根を切る義秋さん。この日も明るい紀子さん。薩摩の国。その国は昔からここにあって、変わらない暮らしが一部分でも続いてきているような時間の流れ方。