モクモクファームに寄ってきた〔4〕

土地を移動させる

 もくもくに寄り、戻った先での農家(こちらはホンモノの有機農家さんたち)との会話のなかで、新規就農の難しさについて「つくる技術も大事だが心配なのが販売先。まず安定した販売先をみつけるのが難しいんですよね」と自身もIターンで10年に入る長野県のIさんが言う。先に販売ありきではない。しかし農業は販売がなければ食っていけない。
 農家は生産だから苦手とあきらめ、営業を放棄し農協に丸投げした挙句価格が折り合わないとグチをこぼす農家がいるかと思えば、農協に見切りをつけ営業に打って出て成功を収める農家
もいる。父祖から作り続けてきた品目をガンコに守り続け借金に苦しむ農家がいるかと思えば、早々と別の品目に切り替え新しい技術に挑戦して経営改善を果たした農家もいる。どの農家も販売には苦しんでいる。
 そしてどの農家も、農家である限りは農地を抱え続けるので「場所替え」という発想を持たない。必ず自分の土地とセットで発想する。消費者との交流も、自分の土地に来てもらわなければならない、と思い込んでいる。この点グリーンツーリズムも農業体験もファームインも同じだ。もくもくをカユく思った理由の根っこもここにあったのかと思う。
 もくもくの発想の新しさは、彼らが農業者である場合、“土地を移動させた”点にあるのだ。彼らは消費者行動を分析しただろう。客がどんなコンテンツを受け入れるのか、消費者心理の導線にどんなアメニティを添えたらカネが落ちるのかを分析した。その上で“地の利”ある位置、都市と農村が交接し最大公約数の集客を見込めるポイントをプロットした。“馬を餌場に連れて行くことはできるが食べさせることはできない”との喩えは、客を半強制的に店に呼び込んだあとは商品力がないと買ってもらえないゾとの商売の教訓だが、彼らはこうは考えない。“馬がうろつき易いポイントに休憩所を造れば腹がへる”。