モクモクファームに寄ってきた〔3〕

農家っていったいこれ

 そこかしこのサインが気になった。レストランの脇に「私たちは農業をしています」。小さな風力発電機の脇に「風さん今日もありがとう」「農村料理の店」「農村カフェ」。駐車場に導く看板にはおどけた文字で「ごめんなさい!もう少しです」の“ごめんなさい”の得も言えぬカユさ。
 ……多分もくもくは農業をしているのだろう。道すがら直営のいちご農場なる看板もあった。駐車場の通り道にもジャージー牧場があった。メインと思しきハムソーの原料豚の飼育舎が見当たらなかったが。そういえば野菜売り場の看板は直営農場ではなく「地元産野菜」。たぶん豚も“地元産”ということか。よくよく看板を見れば、“農家”ではなく“農業”“農村”だから、農家が経営しているのでもないのだろう。
 悪いと言うつもりはないが、ここは農村の“イメージ”を売りものにしている。しかもイメージだけならスッキリするのだが農業もして“しまって”いる上に、たぶん、成功している。会員向け通販事業もやっていて、そのカタログの表紙に載ったシャチョーとセンムの笑顔の写真を見てしまった!
 結論の第一点として、農業ビジネスまたは農協的集荷販売事業として(ということは農業を活性化させることを目的として)ファミレス屋さんを成功させたのではなく、ファミレス屋さんまたはテーマパーク屋さんビジネスとしての必要から「地元野菜」「地元豚」を買い付け、「農業をやっています」と農場も経営して安心イメージを付加した事業であると断じたい。
 そういう視点では学ぶことも多く、悪いと言っているのではない。コア・コンピタンスが何かを眺めつつここに滞在した約1時間の第一印象である。