空をめざして

東京のはずれの土手そばの、殺風景な場所に通っている。
その事務所の向かいにある印刷工場の壁に何かの植物が気になっている。
それは土中から芽吹き、この夏の短いあいだ少しずつ生長して、
もう少しで屋根に届く勢いだった。

今年の夏、梅雨明け後2週ほどはきつい、暑い日が続いたと思う。
その間取材などでそこらじゅう飛び回っていたものだから、
その植物に気付いたのはつい最近だ。
そして暑さも和らいで、今は既に秋の気配が濃厚。

自分も小さな畑をやっているのでわかるのだが、
暑いのが大好きなオクラとかゴーヤ、モロヘイヤあたりは
夏の盛りを過ぎるととたんに勢いを失う。
そんな野菜たちを眺めて、ああ夏も終わるんだナと。
だいたいお盆を過ぎて、秋の準備を考えはじめるのだ。

で、土手沿いの工場の植物が少しずつ、元気を失っている。
空をめざして、元気に伸びていた夏が終わって、
しっかり足場を確保したツルも徐々に弱り始めて、
今は落とされまいと、必死に壁にぶら下がっているように見える。

ああ感傷。

土から生まれた彼。
空を目指す“ヒト”のカタチを纏った植物。
夏がもう少し長かったら、彼は空に結ばれたのだろうか…