育種と農法…岩崎政利さん

buonpaese2007-06-27

岩崎さんのお話6回目……
■固定種は生命力が強い
 …農法を含めた固定種の生かし方
 それは、こういう伝統的にその地方で受け継がれている在来種、固定種というのは、非常に、生命力が強いということ。それに比べて、今のF1種というのは、見栄えもよくて、大きくて、ある程度の耐病性、といいますか、病気にも強くて非常に作りやすいことも事実ですが、生命力に関しては、非常に在来種が強いのもわかってきました。ですから、こういう在来種、固定種の生命力を生かしていけば、これからの有機農業をするなかで、堆肥、有機物を減らせる、有機資材を少なくしておいしいものを作っていく、そういう農法に向いている。要するに、そういう種が、これからの有機農法、自然農法に向いた種であると確信しまして、あ、これはやはりすごいことだな、と感心しまして、今そういう農法を含めたその生かし方について、これからの関心が自分としては、生かせる素材であると感じています。
 その生命力として、究極は土と、太陽と水と人、そういう中でものができる、そういう時代がひょっとしたらこの種を育成することによって花になっていくんではないかと、そういう夢、ロマンが目標に生まれてきまして、種の運動はこれからの新しい農業の中では、避けて通れない運動であるという感じがします。
■農民にしかできない育種
 それからその、自家採種をしていく中で、今まで種というのを雑に考えておりまして、種をたくさん取りたい、ということでわざわざ種を取る畑に堆肥をやったり有機物をやったりしていたわけですけれども、そういう時に限ってですね、あとでアブラムシが発生したり、たくさんの害虫が発生したり、また虫が食べてしまったりですね、種が実らない、強風で吹き飛ばされてしまったりですね、要するに、種というのは、かわいがればかわいがるほど、変なふうに、人間で言えばどういうんですかね、かわいがると能力を発揮しない、ということが私なりにわかってきまして、種子はすばらしい育土で種をとろう、それはまた農民にしかできない贅沢な種取りだと。ですから今は、ほとんど有機物のない、肥料をほどこしていない小さな畑とか、あるいは空き地であれば荒れ畑とか、あるいはその川の中の土手に母本を植えたりして、肥料っけのない厳しい条件のなかで種取りをしてきましたら、非常に採種量は少なくなってきていますが、発芽力も高まってきてる。種の保存力も高いということで、すばらしい育土で採種しなければならない、と感じています。ですから、ひょっとしたらもっとミネラル問題とかもっと考えていけば、農家にしかできない、農民にしかできないぜいたくな、すばらしい育種ができるのではないかと感じがします。
■こぼれ種の話
それによくその、種は母本からずっと選抜をしてきたんですけれども、その、こぼれ種、ということに非常に関心が出てきまして、1回自分の畑で野菜をとると、種がこぼれて次の年に発芽して、そこで地種として生えてくるわけですけれども。こぼれ種でその畑に育った野菜というのは非常に育ちがよくて、自分で蒔けばよく育たない瓜が、こぼれ種だとよく育つという、あ、これはすごいことかな、とこぼれ種に非常に関心がありまして、こぼれ種による自家採種をたくさんすすめてきました。
 作りにくかった出雲系のマクワ瓜が、こぼれ種によって生命力が強くなって作りやすくなってきましたし、むしろこぼれ種の方が作りやすい野菜がありますね、***なんかはそうですね。だいたいこまった時には昨年作った畑のこぼれ種で発芽した***を使って、こぼれ種で育った野菜は非常に生命力が強くて、関心が出てきました。昨年青首大根が育った畑にこぼれ種で育った大根がですね、ものすごく生命力をつけて生えてきまして、それも種を取っていっしょに混ぜたりしてたんですが、そういうこぼれ種による自家採種、もっと厳密にいえば私たち自家採種している野菜を野や山に種を返して、そこで数年繰り返し、世代を繰り返して、それをまた選抜をしなおして畑に返すという、そういうこぼれ種による自家採種、育種の仕方を私たち農民がひとりでも身につけていけば、すごい種のネットワークに広がっていくかなという感じがします。これは種苗会社がなかなかできない、農家の対応の仕方かな、という感じがします。

つくる、たべる、昔野菜 (とんぼの本)

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