はる

はなをこえて
しろいくもが
くもをこえて
ふかいそらが


はなをこえ
くもをこえ
そらをこえ
わたしはいつまでものぼつてゆける


はるのひととき
わたしはかみさまと
しずかなはなしをした


…………
詩人とはこんなふうにイメエジと話をするのか
僕は食べることが気になり
次に言葉が気になり
とてもとても昔思っていた絵のこと恋人のことには至らない
とまであきらめていたのに


こんなふうにイメエジと話をする
それは喩えれば十億年の昔と十億年の未来が僕の肌に住んでいるような


僕は昔思っていた絵のこと恋人のことにすら
こんなにも遠く隔たってしまったのか


そう思うのだ


彼のそばにかみさまがいて
僕と僕の家族のそばに
願わくばおなじかみさまが
笑顔といっしょに
住んでいますように

……谷川俊太郎 はる という詩を読んで