木城

buonpaese2008-01-21

ああ世の中には不思議な場所があるもんだ。
十数年来おつきあいのある生産者、小泉正浩さんご一家が暮らす宮崎県木城町のことだ。そこらじゅうに古墳が点在する台地。山奥には知る人ぞ知る焼酎蔵が潜み、湯布院の喧騒を逃れておどろおどろしい仮面をコレクションし、朽ち果てた教会をアートしているオジサンあり、新しき村をと武者小路実篤に師事し40年も前から自給の暮らしを実践する哲学の人あり。そしておおらかに、中睦まじく、なんとかなるっちゃけんと生きる小泉さんご家族あり。
 どこにあるか。
 宮崎県児湯郡木城町はかの日向神話街道(って知ってるか?)の道半ば。宮崎からJRを北上して高鍋九州山地に向かって西に車を走らせると行くことができる。何もない畑ばかりのだだっ広い町。町を流れる小丸川を遡上していけば霧深い山それも照葉樹林の山に分け入っていくことになる。ああ愉快。


 上左2枚は小丸川をずんずんのぼってたどり着いた木城絵本のさとのスナップ。上右はそのすぐヨコにひっそり佇んでいた石切谷小学校のトーテムポール。山村留学の小さな小さな学校だ。この場所は尾鈴山という照葉樹林に覆われた幽玄な奥山の入口にあって、ここから先は椎葉村とか、それこそディープな山村に分け入っていくことになる。下右はその入口にある尾鈴山蒸留所のカンバン。かの有名な「山猫」の醸造元だ。下右の2枚は同じ石切谷の川の反対側すこし下ったところに、これもひっそり佇む「新しき村」でのスナップ。90年前、武者小路実篤は求めた理想郷は、小丸川が谷を大きく蛇行したU字の丘に広がっていた。ここには支援者の方々の応援により2軒の家族が暮らし、お金のいらない自給的な暮らしをしている。初老の上品な女性と30分ほど、新しき村のお話を聞くことができた。

 小丸川を戻り木城の町はずれにしんと佇む比木神社。お伊勢さんの流れをくむ由緒正しい神社だそうで、苔むした楠の大樹がずしんと迎えてくれた。そして山を下り、小泉さんの暮らす茶臼原に戻ると、ここは広大な台地。はるか向こうに九州山地を眺め、森と畑がなだらかに続く人里になる。のんびりにこやかに小泉さんがいるそのすぐお隣さんが、由布院から引っ越してきたアーティスト。古ぼけた民家を改造してこれもひっそり佇む(これしか喩え方知らん)仮面美術館にはアフリカアジアから年代モノの仮面がずらっと。少々おどろおどろしいが相当な逸品(たぶんコレクションとしては世界クラス)がさりげなく展示されていた。だけでなくここらへん一帯を明治時代から入植して開拓してきた、石井十次さん(孤児救済を進めた偉人。友愛社を創った人)ゆかりの土地で、朽ち果てた教会を祈りのアートスポットにとそれは美しい癒しの空間「祈りの丘空想ギャラリー」が生まれていた。