第一回全国有機農業推進委員会

 去年の12月に成立した法律で、有機農業推進法というものがあるが、これまで有機農業という言葉の存在すら認めてこなかった国がやっと重い腰を上げ、有機農業を推進することになった。内容の説明は省くが、画期的な法律だ。この法律によって、有機農業の推進についての具体的な施策を講じる必要から、国はこれを的確かつ円滑に進めることを企図し、標記の委員会を立ち上げた。
 歴史の現場に立ち会うつもりで傍聴しにいった。
 僕は、有機農業という言葉には愛憎が交錯する。美しい理念に思えたときもあるし、時に融通の利かない金科玉条にも聞こえた。しかし今日、これまで数十年手弁当有機農業を進めてきた諸先輩が委員としてずら〜っと今日の場に出揃い、これを傍聴して、出席していないそれぞれの、僕が知る多くのお仲間の顔が思い浮んだ。各地で繰り広げられてきた物語、生産者が流してきた汗、たくさんの集会、お祭り。浮き足立たず、迷わずにコツコツと創出した方々、その代表格が、時に敵対もした農水省と席を共にしていた。若輩とて、これを感慨深いと言わずどう表現したらいいか。
 しかしこれは有機農業を農業の一分野に縛る危険も孕む。農水省の機構上はそうなっている。有機農業の推進は、ひとえに生産者のためになるから、その意味において画期的なのであって、グローバリズムの趨勢や、地球環境のこと、もう一段高い視点から俯瞰すると、決して楽観は出来ない。何のために有機農業が推進されるべきかが欠落した有機農業は、手段が目的化する愚を謗られよう。
 その意味で、大地を守る会の藤田会長の「できることは協力する」の発言には含蓄を感じた。有機農業が周辺環境に良い効果をもたらし、有機農業の手法が若い就農者に高いモチュベーションを与えるという(商品としてのではない)付加価値を育てよう、と発言した高知の山下氏の論には、親しみを覚えた。
 そんな要素も踏まえて、今後はこの状況をどんなふうに意義深く骨肉化していくのか、敬意を持って期待。そして末席からでも、全国の生産者のことを考え、どのような役割が果たせるか、考えていきたい。

舌足らず。