太田順夫さんという人のことだ。

 この人は中富良野に住んでいる。有機農業をしている。破顔満面長躯、時にしたたかな農家、時に青年の志の気を感じる、それは不思議な人だ。自分の持っている残りの時間を、あれは自分のためなのだろうか、仲間のためなのだろうか、それとも有機農業運動のため? とにかく全身で動き回る人。ええかっこせずに、どろどろになりながら、北海道の雪のない半年間を、畑で過ごす、そんな人だ。だからいろんな人がまわりに集まる。
 そんな印象を強く抱いたのが先月の北海道での太田さんとの2日間だった。
 太田さんは40ヘクタールもの畑をぶんまわしている。タマネギにんじんじゃがいも小麦なすピーマン、これだけでも広い畑とハウスの往復でたいへんなのに、山の畑にかぼちゃ、別の山にはラベンダーにだいこん、かぶ、ブロッコリー、また別の山にはぶどう棚まで持っている。仲間の農家民宿を応援したり、地域の有機王業を推進するNPO作りや、この前の参院選では民主党比例区のツルネンマルティさんの応援団も買って出た。
 いつも睡眠不足だという。
 なにかに憑かれたように働く、というか動き回る。畑回りでは各所の出免さんに付け届けを怠らず、2人いうる研修生との会話は兄貴分のような優しさが醸される。まわりはどう見ているのだろう、あれじゃまわしきらんわ、とでも言うのだろうか。決してカッコいい感じはしない。知的な風貌でもないし、若くもないし、でもステキなのだ。生きてる姿が。そんな人の笑顔は必ず美しい。カメラを向けると、人生の思い出に残るような笑顔が自然にどかん!と現れるのだ。元気をもらえた。
 だから今僕は太田さんが好きである。